中澤信幸「「転図字書」の発生と盛典」2007年01月02日 16:13

副題「─『韻鏡』研究における理論と実用─」 名古屋大学国語国文学99(平成18年12月)

頂戴いたしました。

『韻鏡指南鈔』の所蔵者として、私の名前があります。

飲用される際にはネット上に公開してあると書いておいて下されば、とお伝えしたつもりですが、残念ながら載せていただけませんでした。

こちらに載せております。 http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/ingaku/inkyosinansyo/

言葉遊びと遊びの言葉 岡島昭浩2007年01月15日 14:54

URLは1999.11のもの。
---
言葉遊びと遊びの言葉 岡島昭浩

 古い雑誌を見ていると、そこには「応問欄」なるものがあり、読者のさまざまな問いかけに対して編集者が回答を用意したり、また別の読者が情報を寄せたりしていることが多かったように見える。また、それほど遡らなくても、『言語生活』という雑誌の「目」「耳」欄などでも読者が言葉の情報を寄せていた。その『言語生活』152号(昭和39.5)で、「全国の読者で共同研究を!」と題して、「子どもの遊びのことば」について、情報提供を呼びかけて、その後いろいろと面白い情報が集まったようである。現在、こうした呼び掛けをするには、雑誌ではなく、インターネットが便利である、ということになりそうである。
 例えば、「子供の情景」(http://www2g.biglobe.ne.jp/~gomma/kodomo.html)では、呼び掛けに対して多数の情報が寄せられている。じゃんけんに限ってみても、その呼び方、掛け声、あいこの時の掛け声、勝ち負けではなく二手に分れる時のやり方など。じゃんけん以外でも、かつて『言語生活』でも取り上げられた絵書き歌など、子どものことば遊びについても情報が寄せられている。
 「どれにしようかな」のような言い方と「だるまさんがころんだ」のような数え方に関心を寄せているのが、「どっちの神様?」(http://www.pure.co.jp/~cha-san/docchi.htm)である。「どれにしようかな」については、このページ以外にも収集しているページはある。また以前、wwwページが今ほど盛んでなかった時代に、Netnews上で情報収集が呼びかけられたことがあった。これの集計結果と思われるものがwww上に掲載されたことも有るようだが、十一月末現在では発見出来なかった。
なお、「だるまさんがころんだ」については、小矢野哲夫氏の「けとば珍聞」(http://www02.u-page.so-net.ne.jp/gb3/tkoyano/index.html/)をも参照。

 一方、ことば遊びについてみれば、既存の活字媒体におけるそれも、『教訓カレンダー』などで存在しているようであるが、インターネットの世界に目を向けるならば、その盛んな様子が伺える。例えば、Yahoo! JAPAN(http://www.yahoo.co.jp/)で、「エンターテインメント」の「ユーモア、お笑い」から「言葉と言葉遊び」の項を開いてみると、そこには十一月末現在で一〇〇を越えるwwwページが登録されている。駄洒落から回文、アナグラム、しりとりなどなど、さまざまな言語遊戯のwwwページが開かれているのである。
 その中から「言葉のよろずや」(http://www2.famille.ne.jp/~maps/kotoba/index.htm)を取り上げる。ここはまさに「よろずや」であり、ことば遊びのページとしてのみ取り上げるのは失礼に当るのであるが、「言葉の減らずや」「言葉のよろずや・大阪支社」といった同好のページを生み出しているし、言葉に対する遊び心が全体に感じられるページなのである。

さて、wwwで情報収集しようと思った場合、だまってアンケートの形式を置いておけば回答が多く寄せられる、というものではない。答える側にも楽しみを与える配慮があった方が、回答は多く寄せられるようである。また、既にある程度の情報がある方が、それを読んだ人が、「自分のところではこうだった」という報告を寄せることに繋がるようで、「情報が情報を呼ぶ」ということであるのだが、ページの管理者が、情報を整理して掲載してくれるからこそ、新たな情報が寄せられるのであろう。
 ことば遊びにしてもそうで、ただ駄洒落を垂れ流しにしているようなところでは読む気が失せてしまう。しっかりとした編集があってこそ、読むに堪える、投稿する気になるページとなるのである。
 かつて、橘正一『方言と土俗』、菊沢季生『国語研究』や楳垣実の諸雑誌など、研究者が編集者となり、その個性を感じさせる雑誌があったが、今後そのような指向を持つ研究者は、雑誌編集ではなく、wwwページ編集に向かうことになるかもしれない。

(おかじまあきひろ/日本語史・日本語学史)
---
インターネット言語学情報(26)ことば遊びと遊びのことば
『言語』29巻2号(大修館書店)平成12年2月1日 p105-104

日本語学史と資料の複製2007年01月15日 23:59

URLは、2000年6月頃のもの

---
日本語学史と資料の複製
岡島昭浩

 「WWW上で楽しみながら国語学史を学ぼう」というページを作っているのは、岐阜大学の佐藤貴裕氏である (http://www.gifu-u.ac.jp/~satopy/tabi.htm)。国文学史的な情報が多くなるのでそこは書物で補ってほしい、とのコメントつきで、web上のさまざまなところに見える日本語学研究者たちのエピソードなどを集めている。契沖、賀茂真淵、本居宣長や大槻文彦に橋本進吉など、web上でも丹念に探せばいろいろと情報があるのものだと思わせる。佐藤氏のページといえば、辞書の歴史についての情報がもっとも豊富で貴重なものだが、この国語学史のページもありがたいものである。
 創価大学の金子弘氏のページ (http://www.s.soka.ac.jp/~hkaneko/)では、幕末から明治にかけての資料が多く載せられているが、その中に大槻文彦のものなど日本語学史の資料も含まれる。筑波大学日本語学研究室学術データ室 (http://www.lingua.tsukuba.ac.jp/nihongo/data.html)には、明治期の文法書のデータがある。中澤信幸氏のページ (http://www5a.biglobe.ne.jp/~nobnob/)は、漢字音を中心としたものであるが、漢字音研究史にかかわる資料がある。現在のところは中澤氏の論文などが中心だが、今後、字音資料なども追加される予定のようである。
 手前味噌になるが、私のページ (http://kuzan.f-edu.fukui-u.ac.jp/)にも日本語研究史にかかわる資料を掲載している。ここしばらく更新を怠ってきたが、近日中に、亀田次郎『国語学書目解題』、本居宣長『字音仮字用格』解説部分のテキストデータを公開する予定である。
 文学関係のデータは、昨年度からの国文学研究資料館(http://www.nijl.ac.jp/)の旧日本古典文学大系データの試験的配布や、今年度になってからの菊池真一氏主宰の J-TEXT(http://www.j-text.com/)など、ますます充実の樣相を呈しているが、語学関係のものはまだまだである。
 以上は主にテキストによるものであるが、画像での資料ということになると、例えば大阪市立大学学術総合センターライブラリーサービス (http://libhome.media.osaka-cu.ac.jp/)で、江戸時代の板本を多数有する森(繁夫)文庫所藏の諸資料を見ることが出来るなど、語学史関係の資料が含まれるサイトがいくつかある。また、私のページにも実験的にいくつかの画像を置いてみた。その際、著作権のきれたテキストを集めているプロジェクト・グーテンベルグ(http://www.gutenberg.org/)や、翻訳テキストを集めているプロジェクト杉田玄白 (http://www.genpaku.org/)にならって、「プロジェクト高羽五郎」という名称を考えていた。精密な複製の望まれる資料の場合には、良質な印刷と紙を使った高価な複製本でもよいのだが、ある程度読めればよいという資料の場合には、さほど巨大でないファイルサイズの画像データで配布することが可能となる。高羽五郎氏は、ガリ版や青焼きやコピーで「国語学資料」「抄物小系」「談義本小系」などを配布していたが、私はそのひそみにならおうとしたわけである。
 ところが、私のサイトはネットワーク的に奥まったところにあるためデータがうまく出てゆかず、サーバが不安定となってしまう。さらに、ネットワーク的に遠いのなら全て手元にダウンロードしておこう、と考える人もいて、それでサーバはますます不安定になる。そういう状況なので、その後は画像を増やしていない。サーバのディスク容量はまだ余裕があるのにそうせざるを得ないのである。インターネットにこだわらず、CD-Rなどでの配布ということも考えられるが、焼付や郵送の手間が大変である。ネットワークの背骨がもっと太くなった時にまた考えたいと思っている。
インターネット言語学情報(32)日本語学史と資料の複製
『言語』29巻8号(大修館書店)平成12年8月1日 p79-78
---

これが、うわづら文庫になるわけです。

論文データと学会ページ2007年01月16日 00:42

URLは、2000年12月頃のもの。

---
論文データと学会ページ

 国語学関係の論文を探すのに有用なものに「国語学研究文献総索引データ」がある。以前市販されていた1954-1985年のデータにキーワードを付したもの(国語学会と国立国語研究所による)は、既に1999年から公開されていたが、国立国語研究所が作成した1986-1991年のデータも、2000年10月末から追加公開されている(http://www2.kokken.go.jp/kokugokw/bunkenkw.html)
 また『国語学』誌では、1950年から、一年あるいは二年ごとに、学界を振り返る「展望」を行っているが、国語学会では、その展望をデータベース化したものを作成し、公開に向かって執筆者の了解を得ようとしている。「『国語学』:「展望」記事データベース」(http://jcs.aa.tufs.ac.jp/sjlDB/SJS/)が、それであるが、執筆者の著作権に配慮しつつ公開を考えるのはありがたいことである。なお、既に『国語学』200号までの記事一覧・索引が作成・公開されている。また同学会のページ(http://www.jpling.gr.jp/)には、その他に研究会情報の掲示板や新刊案内もあり、非常に有用なページとなっている。
 なお、計量国語学会(http://www.sccs.chukyo-u.ac.jp/math-ling/)でも、既刊号の目次データを載せているし、日本言語学会(http://www.tooyoo.l.u-tokyo.ac.jp/~lsj/)でも、『言語研究』101号以降の目次情報や研究会の案内を載せている。日本語文法学会(http://www.lingua.tsukuba.ac.jp/sjg/index.html)もある。

 論文を探す、ということに話を戻すと、国文学研究資料館(http://www.nijl.ac.jp/)のデータベースの中の「国文学論文目録」では、国語学関連の論文も拾える。また、論文を探すために人物についての情報を求めることもあるが、それについては、例えば、「没年調査協力会」(http://page.freett.com/Schuricht/aozora/itiran.html)や、皓星社のデータベース(http://www.libro-koseisha.co.jp/top01/main01.html)などを参照。なお「インターネットで公開されている各種の目録・書誌のうち学術的な関心に耐えうるものを収録・公開」という、岡本真氏の「生成する目録」(http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/BIBLIO/bibliography.html)は、本連載でも既に第20回で後藤斉氏の取り上げたものだが、再び載せておく。

 論文目録以外のデータとして特筆すべきものに、国立国語研究所の言語変化研究部第1研究室(http://www.kokken.go.jp/hogen/)の提供する方言データがある。これは『方言文法全国地図』1-4のデータであるが、このようなデータが無償で利用出来ることは非常にありがたいことである。

 ところで、インターネット上に公開されているデータの形式で気になる点がある。OSに依存したり、ソフトに依存したりする形式のあることである。ソフトに依存といっても、PDF形式の様に、OSに関わらずフリーのビューアのあるものなら良いのであるが、ワード・エクセル・桐など特定のソフトでしか読めないデータのみを置いてあると困る。また、テキスト形式であっても、Windows上でしか圧縮を展開することの出来ない自己解凍書庫であったりするのも困る。MacやUnixでも、zipやlzhは展開出来るのだから、テキスト形式のデータをzipかlzhで圧縮したものを1つだけ置いておけば済むと思うので、データを公開される方には考えていただきたいと思う。
 そういえば、CD-ROMでデータを配布する際に、ハイブリッドCD-ROMにしているものを見ることがある。Mac用のソフトがなくデータだけなら、わざわざMac用のHFSフォーマットで書き込む必要はなく、Windowsと同じISOフォーマットでよいので、ハイブリッドにしてディスク容量を減らすことはないと思う。データベースの条件として「機種に依存しない」ということは必要だが、そのためにはハイブリッドにしなければならない、と考えるのは硬直した条件であろう。

インターネット言語学情報(38)論文データと学会ページ
『言語』30巻2号(大修館書店)平成13年2月1日 p97-96
---